
○時間に1棟?東京の新築マンション、いったいどれくらいのペースで建っているの?
「東京って、どこを歩いてもマンションばかりだな」と感じたことはありませんか? 駅前には新しいタワーマンション、住宅街には工事中の囲い。東京に住んでいると、マンションがどんどん建っているように見えますよね。
では実際のところ、東京ではどれくらいのペースで新築マンションが生まれているのでしょうか。「1日に何戸?」「何時間に1棟?」と聞かれると、意外と答えられないものです。
この記事では、不動産経済研究所や東京都の公表データをもとに、東京の新築マンションが建つスピードを「時間」に置き換えてわかりやすく解説します。分譲マンションだけでなく、賃貸マンションの数字もあわせて見ていくので、これからお部屋探しをする方にも役立つはずです。
結論を少しだけ先にお伝えすると、「東京はマンションが多い」というイメージは半分正しく、半分は変わりつつあります。分譲は減り、賃貸は増えている。そんな東京の今を、数字で一緒にのぞいてみましょう。
1. 東京の新築マンションは「約36時間に1棟」

東京で売り出される新築マンションは、戸数で見ると「約50分に1戸」、建物で見ると「約36時間に1棟」のペースです。まずは、この数字がどこから来ているのかを順番に見ていきましょう。
1年間で売り出された新築マンションは約1万戸
新築マンションの市場動向を毎年まとめている不動産経済研究所によると、2025年に東京23区で発売された新築マンションは8,064戸、23区以外の東京都下は2,749戸でした。合計すると、東京都全体で1年間に約1万800戸の新築マンションが売り出されたことになります。
「1万戸」と聞いても、多いのか少ないのかピンとこないですよね。そこで、この数字を「時間」に置き換えてみます。
時間に換算すると「約50分に1戸」
1年は8,760時間です。これを東京都全体の発売戸数で割ると、約49分に1戸のペースで新築マンションが売り出されている計算になります。1日あたりにすると約30戸。通勤電車に揺られているあいだにも、東京のどこかで新しい住まいがひとつ生まれているわけです。
23区だけに絞ると約65分に1戸、つまりほぼ「1時間に1戸」です。範囲を首都圏(1都3県)まで広げると、2025年の発売は2万1,962戸なので、約24分に1戸というスピードになります。
2025年のデータ
東京23区……8,064戸(約65分に1戸)
東京都全体…約10,800戸(約49分に1戸)
首都圏………21,962戸(約24分に1戸)
「1戸」ではなく「1棟」で見ると?
マンションは1棟に数十戸、大規模なものだと数百戸がまとめて供給されます。そのため「1棟」単位で数えると、ペースはぐっとゆるやかになります。
長谷工総合研究所の集計では、2025年に首都圏で販売が行われたマンションは489物件でした。このうち東京都のシェア(戸数ベースで約49%)を当てはめると、東京では1年に約240棟が売り出された計算です。時間に直すと、約36時間に1棟。だいたい「1日半に1棟」のペースということになります。
「建っている」と「売り出されている」は少し違う
ここで紹介している数字は、あくまで「その年に販売された戸数」です。新築マンションは建物が完成する前に販売を始める「青田売り」が一般的なので、実際に建物ができあがるのは販売開始から1〜2年後というケースも珍しくありません。
さらに最近は、1つの物件を何回かに分けて少しずつ売り出す「小分け販売」が主流になっています。同研究所によると、2025年の首都圏では1回あたり10戸未満の販売が全体の62.0%を占めました。街で見かける建設中のマンションの数と、統計上の発売戸数の感覚がずれるのは、こうした事情もあるんです。
実はこのペース、かなり「遅く」なっている
「50分に1戸」でも十分速く感じますよね。でも実は、これでも過去と比べるとかなりスローダウンしています。首都圏の発売戸数は2025年まで4年連続で減っていて、統計を取り始めた1973年以降でもっとも少ない水準なんです。
つまり、「東京はマンションが多い」と感じる一方で、新しく売り出される分譲マンションの数は、実は歴史的に見て少ない時代に入っています。次の章では、そのペースがどう変わってきたのかを振り返ってみましょう。
ちなみに、新しいマンションに住みたいけれど購入はまだ考えていない、という方には「分譲マンションを借りる」という選択肢もあります。
2. 実は減っている?ここ10〜20年の供給ペースの推移
首都圏の新築マンション供給は、2000年のピークから2025年までに4分の1以下まで減りました。「マンションが多い」という印象とは裏腹に、新しく売り出される数は長い下り坂の途中にあります。
ピークは2000年、首都圏で約9.6万戸
首都圏の新築マンション供給がもっとも多かったのは2000年前後です。長谷工総合研究所のまとめでは、2000年は95,635戸、2001年も89,256戸と、年間9万戸前後という高い水準が続いていました。
東京23区だけを見ても、今とは比べものになりません。2004年の23区の供給は39,147戸で、2025年(8,064戸)のおよそ5倍です。当時は都心回帰の流れに乗って、湾岸エリアのタワーマンションをはじめ大量のマンションが建てられていました。
リーマンショックで急ブレーキ、アベノミクスで一時回復
2000年代半ばからは、供給が少しずつ減り始めます。2006年には首都圏の供給が7万4,534戸となり、8年ぶりに8万戸を下回りました。そして2008年のリーマンショックで市場に急ブレーキがかかり、供給は大きく落ち込みます。
いったん持ち直したのが2013年です。この年の首都圏の供給は5万6,476戸で、前年から23.8%増えました。金融緩和の追い風や、消費税増税前の駆け込み需要が重なった時期です。
2010年代後半からじわじわ減少、コロナで28年ぶりの低水準に
ところが、この回復は長く続きませんでした。2019年の首都圏の供給は3万1,238戸まで減少します。そして2020年にはコロナ禍が直撃。モデルルームの営業自粛などが響き、首都圏の発売戸数は2万7,228戸と、1992年以来28年ぶりの低水準になりました。
2025年は統計開始以来の「過去最少」
コロナ禍が落ち着いても、供給は元に戻りませんでした。2023年は2万6,886戸、2024年は2万3,003戸と減り続け、2025年は2万1,962戸に。2025年は、統計を取り始めてから50年以上のなかで、もっとも新築マンションが売り出されなかった年だったんです。
「時計」で見ると、ペースは4倍以上遅くなった
2025年 21,962戸 約24分に1戸
2020年 27,228戸 約19分に1戸
2013年 56,476戸 約9分に1戸
2000年 95,635戸 約5.5分に1戸
2000年には約5.5分に1戸だったペースが、2025年には約24分に1戸。時計の針の進み方が、4倍以上ゆっくりになった計算です。23区に絞ると、2004年の約13分に1戸から2025年は約65分に1戸へと、およそ5分の1まで落ちています。
ここまで減った背景には、いくつかの理由が重なっています。都心ではマンションに向いた土地がほとんど残っておらず、用地の取り合いで価格が上がっていること。資材や人件費の上昇で建築費が高止まりしていること。そしてデベロッパーが、数を絞って都心の高額物件に集中する戦略をとっていることです。
その結果、2025年の東京23区の新築マンション平均価格は1億3,613万円と、3年連続で1億円を超えました。「買いたくても手が届かない」と感じる方が増え、賃貸に目を向ける人も多くなっています。
3. どこで建っている?23区・新築マンションの集中地帯

供給全体が減るなかで、新築マンションは「東京23区」「都心から10km圏の湾岸」「タワーマンション」にますます集中しています。一方で、23区の外側の「都下」でも供給が伸びているのが最近の特徴です。
首都圏の新築の3分の1以上は東京23区
2025年に首都圏で売り出された新築マンションのエリア別内訳は、東京23区が8,064戸(シェア36.7%)、東京都下が2,749戸(12.5%)、神奈川県が4,918戸(22.4%)、埼玉県が3,153戸(14.4%)、千葉県が3,078戸(14.0%)でした。
首都圏で売り出される新築マンションの、ほぼ3戸に1戸以上が23区の物件というわけです。23区の戸数そのものは前年より減っていますが、首都圏全体に占める割合はむしろ少し上がっています。数が減っても、「新築は東京23区が中心」という構図は変わっていません。
大規模物件は「東京駅から10km圏」と湾岸に集中
供給の中心を担っているのが、数百戸規模の大型マンションです。長谷工総合研究所によると、2025年に販売が始まった総戸数200戸以上の大規模物件は23物件。そのうち東京駅から10km圏内は前年の6物件から9物件に増え、10km以遠は27物件から14物件へと大きく減りました。同研究所は、こうした立地の変化について次のようにまとめています。
10km圏内のなかでも、特に集中しているのが都心の湾岸部です。中央区の勝どき・晴海、江東区の豊洲・有明、港区の芝浦などは、まとまった土地を確保しやすく、タワーマンションが次々に建ってきたエリアです。
タワマンの割合は過去最大に
湾岸と並んで目立つのが、マンションの「超高層化」です。2025年に首都圏で売り出された新築マンションのうち、総戸数200戸以上かつ20階以上の超高層物件は4,530戸。全体に占める割合は20.6%で、調査開始以来の最大となりました。新築マンションの5戸に1戸がタワーマンションという計算です。
大規模なタワーマンションは、戸数が多いぶん用地費や建築費を分散しやすく、駅前の再開発と一体で計画されることも多いのが特徴です。共用部にジムやラウンジ、コンシェルジュを備えた物件も増えています。
実は伸びているのは「都下」
23区ばかりに目が行きがちですが、2025年に勢いがあったのは23区の外側でした。東京都下の供給は2,749戸で、前年比34.7%増と大きく伸びています。販売を始めた物件の数も、前年の23件から41件へとほぼ倍増しました。
背景にあるのは価格です。23区の平均価格が1億円を大きく超えるなか、都下の平均価格は6,699万円と23区の半分ほど。「23区は高すぎる」と感じた買い手と、それを見込んだデベロッパーが、郊外に目を向け始めていると言えそうです。
これは賃貸でも同じで、駅名のブランドにこだわらなければ、同じ予算でも広さや設備のグレードを上げやすくなります。
「どこで建つか」は毎年入れ替わる
最後に注意したいのが、エリア別の供給戸数は年によって大きく変わるという点です。大規模物件がひとつ売り出されるだけで、その区の数字は一気に跳ね上がります。たとえば2024年には、北区が前年の852戸から185戸へ、足立区が1,043戸から555戸へと大きく減りました。
ある年のランキングだけを見て「この区はマンションが多い」と判断するのは早計です。街の勢いを見るなら、数年単位の流れや、再開発の予定もあわせてチェックするのがおすすめです。
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4. 分譲の6倍のスピード!東京の新築賃貸は「1日約185戸」生まれている
東京では、賃貸住宅が分譲マンションの約6倍のスピードで建てられています。街で見かける「新築マンション」の多くは、実は賃貸物件なんです。
東京で1年間に建ち始めた賃貸住宅は約6.7万戸
ここまでは「買う」ための分譲マンションを見てきましたが、東京では「借りる」ための新築物件も数多く建てられています。東京都の住宅着工統計によると、2025年に都内で工事が始まった新しい住宅は122,130戸。同じ年の持家は12,882戸、分譲住宅は41,209戸でした。東京で新しく建ち始めた住宅の半分以上が賃貸、ということになります。東京の住まいづくりの主役は、実は賃貸なんです。
月に約5,600戸、1日に約185戸
年間6万7,000戸あまりを、もっと身近な単位に割ってみましょう。
新築賃貸(東京都・2025年)
1か月…約5,600戸
1日……約185戸
1時間…約7.7戸(約8分に1戸)
1章で見た分譲マンションは約50分に1戸でしたから、賃貸はおよそ6倍のスピードです。
ただし、ペースは毎月一定ではありません。2025年3月の貸家着工は8,386戸と、前年同月から5割以上も増えました。これは2025年4月から新築住宅に省エネ基準への適合が義務化され、その直前に駆け込みの着工が集中したためです。一方で5月は4,905戸にとどまるなど、制度変更や金利の動きによって月ごとの数字は大きく揺れ動きます。
ただし「賃貸=マンション」とは限らない
ここで注意したいのが、統計上の「貸家」には木造アパートや戸建ての賃貸も含まれるという点です。鉄筋コンクリート造などの、いわゆる「賃貸マンション」はその一部になります。
参考になるのが首都圏のデータです。長谷工総合研究所が国土交通省の統計をもとにまとめた資料では、2025年の首都圏の貸家着工130,927戸のうち、鉄骨造・鉄筋コンクリート造などの共同住宅(マンションタイプ)は77,068戸でした。割合にすると約6割です。
東京都も同じ比率だと仮定すると、賃貸マンションは年間約4万戸、1日に約110戸、約13分に1戸のペースという試算になります。建物の数で見ても、仮に1棟あたり平均25戸とすれば年間約1,600棟、1日に4〜5棟の賃貸マンションが東京で着工している計算です(※いずれも推計)。分譲マンションの「約36時間に1棟」と比べると、その差は歴然ですね。
また、ここで紹介した数字は「着工」、つまり工事が始まった戸数です。賃貸マンションが完成して入居が始まるのは、規模にもよりますが着工から1年前後先になります。今年の着工数は、来年以降に街に現れる新築賃貸の「予告編」と考えるとわかりやすいでしょう。
分譲は減り、賃貸は増える
興味深いのは、分譲と賃貸で動きが逆になっている点です。2025年の東京都では、分譲マンションの着工が前年比8.9%減だったのに対し、貸家は2.9%増でした。
新築分譲マンションの平均価格が1億円を超え、「買いたくても買えない」人が増えるなかで、都心の住まいは「買う」から「借りる」へと少しずつ比重が移っているのかもしれません。最近では、分譲マンション並みの設備やセキュリティを備えた高級賃貸マンションも増えていて、「あえて買わずに借りる」というライフスタイルを選ぶ方も珍しくなくなりました。
ただ、新築や築浅の人気物件は、募集が始まるとすぐに申し込みが入ってしまうことも多いもの。良い部屋に出会うには、情報の早さと初期費用の準備がカギになります。
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まとめ:東京の新築事情を知って、賢くお部屋探しを
東京の新築分譲マンションは「約50分に1戸」「約36時間に1棟」、新築賃貸住宅は「約8分に1戸」のペースで生まれています。
「東京はマンションが多い」というイメージは、半分は正しく、半分は変わりつつあります。分譲は数が減って価格が上がり、そのぶん賃貸が東京の住まいを支える存在になっているんです。だからこそ、これからの東京での住まい選びでは、新築・築浅の賃貸物件を上手に見つけて、条件よく契約することがますます大切になります。

執筆監修

趙暉士(ちょうきし)|宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、管理業務主任者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
賃貸リーシングとコンサルタントを経験し、後に売買仲介業務に従事。
(株)大京穴吹不動産、都心営業部、渋谷店、流通営業1課


